五斗米道布教記4

永安か、成都か、会議室の議題はそれで持ちきりだ。
賈ク曰く
「襄陽まで伸びた劉璋は愚かと言わざるを得ません。永安から荊州に出るという考えは上策。なれど一気に襄陽を奪うのは下の下。かの国は一気に戦線が伸びきり、御覧なさい、襄陽一国がまるで突き出た頭のようになっております。伸びきった首は刈り取るのが殺傷の定石。首に当たる永安を落とすことは劉璋の首を切ることも同意。永安へと攻め入ることを強く勧めます。」
閻圃曰く
「たしかに賈ク殿のおっしゃりようも正論。しかしながら永安を奪うということは、我等が中原への出口を一つ増やすということになり、引いては中原からの入り口を一つ設けるということにも繋がりましょう。荊州には衰えたとはいえ、いまだ劉表が健在。南部荊州には孫策が勢力を拡大し始めております。いま我等がなすべき事は巴蜀の征圧。永安を制する事なぞはいつでも出来ましょう。巴蜀の首都たる成都を我等が制する事こそ天下に巴蜀の覇者は誰であるかを示す最も良い例となりましょう。」
虎痴曰く
「知るかよ。」


3者3様の意見が対立し、まさしく三つ巴。これぞ三国志。とニヤニヤして見ていたのだが、どうするか決めるのは教祖たる僕の仕事。正直賈クと閻圃が何いってるかは良く解らない。困ったなあ。
そういや劉璋のカス野郎は永安に攻めてきた劉表の攻撃を撃退したかと思ったら、生意気にもカウンターで襄陽を奪ってたなあ。アイツ馬孟起にビビって無血開城する以外のこと出来るんじゃねえか。
孫策はたしかにおっかねえよなあ。
困ったなあ。
と、そこへ張衛がやってきた。
「あ、兄者。成都ってすげーよ。商人がいっつもいるよ。米買い放題じゃん?」
ああ、そうか。我等は五斗米道。米がいつでも買えるなら、信徒に配る米に困らないじゃないか。
うん。いまポッコリ決定。成都に決定。
でもこの決定に閻圃が捻くれて「もう殿に献策なんかしねーよ。」って言い出したら嫌なので、
「私の決定は成都を攻めることにした!成都に住まう多くの民衆を救うためだ!成都は古くより劉璋の悪政に苦しんでおり、永安は今だ日は浅い!救うならまず成都からだ!」
とそれっぽい事を言った。そしてそれだけでは不安なので
「今後この意見に異見のあるものはこうだッッ!」
と、韻を踏んじゃったりしながら、机を真っ二つに切った。これで士気はうなぎのぼり!


決定したら、話は早い。
賈クに聞いたら、張衛を大将に15000で綿竹に砦を作りに行かせるのと同時に、虎痴に歩兵中心に構成した2万を率いさせ成都を襲え、とのこと。
ハハハハ、賈クは馬鹿だなあ、歩兵で城を襲ってもなんにもならないんだよ?
賈ク曰く
「砦を作っている最中に迎撃されたら、その部隊は一たまりもありません。大体我が国は結構な金不足ですぞ?砦を2,3、遠慮無く作っては失敗して、などはできません。ですから、その部隊の守備と成都に対する牽制の意味を込めて、2万を同時に派遣するのです。こんなことも解らないのですか?馬鹿。」
ハハハ、解っていたよ。賈クを試したんだよ。


賈クの言うとおりに出撃させたら、成都から1万の迎撃部隊が出てきた。
が、所詮は蜀の弱兵。
虎痴と高涼の奮闘やデビュー戦である稜択の奮戦が発動し、呆気なく城に引き上げていった。
遠く漢中から「我が策思い知ったか!」と叫んだら賈クが「私の策です。」と冷静に述べやがる。細かい事きにすんなよ。


綿竹に砦が完成し、虎痴もそこに入る。
再編を済ませて張衛と楊拍の15000と、高涼と稜択の15000とをそれぞれセイランで出撃させる。
それぞれの軍に、張衛には賈クと楊阜、高涼には閻圃、を軍師として従軍させ、戦力差を均一にした上で「城を落とした方の勝ち!」として同時に成都攻略に向かった。


相手は先の迎撃戦で兵士は減っており、12000ほどが城に篭る。
そんな弱った成都につくや否や、張衛の斉射に楊拍が呼応!
張任答えて曰く
「効かぬ!」
またかよ。張任つえーよ。
閻圃が混乱を発動。
張松答えて曰く
「看破!」
このように両軍1歩も譲らぬ駄目っぷりを如何無く発揮し、張魯の血圧を上げることに成功。
見るに見かねた賈クが「仕方ねーなー」とばかりに混乱を発動。見事成都を混乱させる。そしてその隙を見逃さず、楊拍が斉射を発動。
張任曰く
「だから効かぬ!」
オカシイよ。確率的に有り得ないほど張任が強い。
時間だけが無為に過ぎさり、消耗戦となっていったが、兵士数の量が勝敗を分け、成都を陥落させる。どっちの軍も弱っちーな。


取るや否や賈クが狂ったように
「峨眉が、峨眉が、吉祥、峨眉、僕、行く、峨眉!」
と五月蝿いので論功行賞も行わないスグに蛾眉に賈クを派遣したら、
「酒くれ〜。」
と捜索したらたまに出てくる爺に出会う。
賈クは「飛んだ吉祥だ!」と切れて、爺を撫で斬りにして血祭りでも開催するのかなと思ったら、国庫から貴重な金500を持ち出して爺にくれてやる始末。買えってき次第、僕が賈クを撫で斬りにして血祭り開催してやろうかと思ったら
「仙道を極めました!」
と得意げなツラで1冊の本を見せてきた。
妖術書らしく、「妖術」の使用が可能になるらしい。
羨ましいので没収しようとしたら、
「これは私がジジイにもらった物です。私のものは私の物、殿の物は殿の物。たとえ殿でもこの自然の摂理は曲げられません。曲げて良いのはジャイアンだけです!」
と正論を吐いて懐にしまってしまった。
クソ、諦めてやる。でもな、賈ク。僕は見たよ。その本の端に赤い血の跡があることをネ。


そして僕はウサばらしに牢に捕らえた張任を見に行った。
ネチネチといびって精神的に自殺においこんでやろうと、矢傷を見せながら、あの時は痛かったなあ、とネチネチといびったら
「なんと言われようと主はかえぬ!」
とかほざきやがる。だから、ね。そうじゃなくて、君、捕らえられた。僕、君の生殺与奪権を持ってる。君、僕にいびられる、辛い。
ほら、ほら、この矢傷。
「この張任変節漢にしたいのか!」
駄目だ、こいつ日本語つうじねえや。


悔しいので劉璋が「張任を返してください。」と平身低頭やってきたときに、おととい来いや、ペッ。と追い返してやった。ちょっとは溜飲が下がったかな。
いや、まだまだ足りぬ。
永安じゃ。永安も落としてやる。
襄陽を王甫とやら一匹に任せるなんていうウッカリミスをして落とされた劉璋は今や永安と江州と雲南建寧を擁するのみ。いつぞやは一大大国であったのが嘘のよう。
一気に永安を奪い、巴蜀の南に追いやってしまおう。